東京高等裁判所 昭和32年(ラ)335号 決定
本件抗告理由の要旨は、抗告人は本件競売申立人たる伊藤法準より本件競売の目的物件たる抗告人所有の本件建物二棟に抵当権を設定して金五十八万円を借入れたことはあるが、抗告人は昭和二十八年九月二日東京法務局所属公証人千秋正作成第三〇三七号金銭消費貸借公正証書を以て右伊藤法準から金五十万円を借受け、これに不足分を加えて右五十八万円の債務を完済した。よつて抗告人は東京地方裁判所に対し昭和三十二年(ヲ)第二三一号不動産競売手続開始決定に対する異議を申立てたが、同裁判所はこれに対する決定をせずして競売をなしたものである。(中略)以上の次第につき、原決定を取消すとの裁判を求めるため、本件抗告に及んだというにある。
しかし、不動産競売手続開始決定に対する異議申立が執行停止の効力を有しないことは民事訴訟法第五四四条第一項が執行裁判所に同法第五二二条第二項所定の命令を発する権を付与していることと同法第四一八条第一、二項の規定とを対照して疑を容れない。したがつて本件において不動産競売手続開始決定に対する抗告人の異議申立につき原審が決定をしないまま競売手続を進め競落許可決定をしたからといつて、これを目して違法となすことはできない。
(柳川 村松 中村匡)